現在位置: carview! > 編集記事 > コラム > 【クルマ小説】僕は新人トップセールス vol.9「エンドウさん」

ここから本文です
  • みんカラ つぶやく
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【クルマ小説】僕は新人トップセールス vol.9「エンドウさん」
  • 【クルマ小説】僕は新人トップセールス vol.9「エンドウさん」

2台の携帯

エンドウさんはエリート顧客向けと建設系の顧客向けに、携帯電話を2台使い分けていた。そして84年型ハイエースにも早々にハンズフリーキットを導入した。

「あー、常務!お世話さまっす!セレクトのエンドウっす!ところで常務、昨日の府中のヨンパチ獲ったの?え、獲った?本当!?アンタも危ねえ橋渡るなぁ、はははは!」

そんな会話が終わり、その次の会話では。

「セレクトのエンドウでございます、いつも大変お世話になっております。先だってのメルセデスケア継承の件でございますね?明日にでも弊社の従業員を向かわせます。ただ、お車を一旦お預かりして宜しいでしょうか?では18時に新宿ということで」

といった、二重人格のようなキャラクラーの切り替えの巧さ。そして彼にはその時々に「ウソ」がない。エンドウさんのような社長がいなければ、この中古車屋は草の根的に信用と評判を高めることはなかったのかもしれない。

エンドウさんはクルマに対する眼力の鋭さも並々ならぬものがあった。他店で無事故と査定されたものを、微妙なサブフレームの歪みと左右ヘッドライトの劣化具合の違い、左右フェンダインナーのシーリングの違いなどから、エンドウさんは事故車と判定した。無事故、実メーター、メーカー保証継承納車をうたっているカーセンターセレクトは彼の眼力によるとこは多々あった。

ある日。僕はY32型日産グロリア、平成7年式グランツーリスモS2 限定車を見たいというお客様をお相手した。下取りナシ。年齢は50歳くらい。身奇麗な紳士といった印象。限定装備のBBS鍛造アルミホイール、リアスポイラー、車体はソリッド黒の屋内保管。程度は例によって極上。それを158万円で出していた。お客様は実車をロクに見もせず「即金」で買うというのだ。商談もスムーズ、あっけなく押印まで辿り着く。でも、念の為に試乗に出かけてもらった。そこでエンドウさんに呼び止められる。

「マエダさ、あのお客さん、なんでいまY32なのかっていうお話、できているか?」
「いえ、そうなる前に契約の話になりまして」
「いや、そこは突っ込んだほうがいいな、俺はそう思う」

「下取りナシ」で、年齢50の紳士がY32グロリアを購入する。その背景が僕には確かによく見えていなかった。普通は乗り継いできたクルマがある。車を買う所作も手馴れている。初心者でないことくらいはすぐにわかる。何か事情があるのではないのか、というのがエンドウさんの読みだった。

コメントの使い方

みんなのコメント

ログインしてコメントを書く

(株)カービュー関連サービス

メールマガジン メールマガジン

愛車無料一括査定

あなたの愛車今いくら?

車の種類を選択
事故車 商用車
お住まいの郵便番号を入力
-
※郵便番号がわからない方はこちら

※(株)カービューのページへ移動します