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【クルマ小説】僕は新人トップセールス vol.3「そして夜は更けていった」
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乗り終えた表情は硬かった

やっぱり駄目だったか、と思ったが次の瞬間、興奮から転じて深い感銘のため息を混じらせて彼は言った。

「いやぁ、目が覚めるようだね。鮮やかで実にいい走りだ」

こういうケースは初めてではない。例えば、マーク2ツアラーVに乗っていて、自分では走り屋でクルマのことを知り尽くしていると自負のある人が、このように初めてBMW、しかもどうってことないと思っていた320や318に乗ってみて「目が覚める」といった発言をするシーンを僕は何度となく目にしてきたし、何を隠そう僕自身がそうだった。その反面、国産車に慣れきった人には、ちょっと重たすぎて、と拒絶されることもある。評価が真っ二つになる可能性のある国産からBMへの乗り換えだったが、高柳さんは非常にポジティブに受け入れてくれたようで安心した。

そして高柳さんはセカンドバッグの中から銀行の封筒を取り出し、提示した見積額の端数、8千6百何十円をちょん切った分だけのお札を取り出し、印鑑証明2枚と実印、記入済の車庫の自認書、そんな一式を並べ始めた。僕のお客さんは自営や中小の経営者が多く、ローンは圧倒的に少なくてラクだった。みんなこのようにゲンナマを忍ばせて僕の元にやってくるのだ。

「ケースケさんよぉ、端数はあとでな、あとで・・・」

意味がわからなかったが、それぐらいなら社長に怒られても自分の給料から天引きにしてもらえばいいやと思い、端数切りした契約書を作って捺印していただいた。そして営業先から社長が戻る。

「あぁこれは社長さん、ウチのケースケがお世話になっておりますようで・・・違うか!(笑)」

と言って目を見開き、おどけてみせる姿が猛烈に懐かしくてちょっとだけグッと来てしまった。そう、彼にはお世話になっていたのである。お世話になっていた、だけではなく、仕事のイロハを教えていただいたところもある。そんな恩義のある人に満足していただけるクルマをお世話できるということ、クルマの売り子にとってはこの上ない喜びなのだ。

「社長さん、ケースケを、今日はお持ち帰りしてもいいですかな?」

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