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マツダ アクセラ大幅改良のとんでもない中味と試乗レポート

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マツダ アクセラ大幅改良のとんでもない中味と試乗レポート

マツダ・アクセラが2016年7月14日大幅改良の発表をした。その内容は大きく分けて4つあり、そのうちアクセラ専用の改良はエクステリア、インテリのデザイン変更が中心で、その他の改良は今後のマツダ車すべに共通する改良となるものだ。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

具体的に4つのポイントを整理すると、まずエクステリアの意匠変更、そして当サイトでも解説しているGVC(G-ベクタリング・コントロール)の搭載、2.2Lディーゼルエンジンの改良と1.5Lディーゼルの新搭載、そして、アクティブセーフティの分野での改良という要点になる。

意匠変更を見てみると、鋼板部分の変更はなく樹脂パーツの変更だ。前後のバンパーデザインが変更された。ただしセダンのリヤバンパーは変更をしていない。ドラスティックにデザイン変更をしていくやり方ではなく、熟成をしていく手法だと説明している。そのため、派手ではないが、オーナーにとっては旧型となったモデルでも、愛着を持ち続けやすいのかもしれない。

■GVCはクルマの世界を変える
今回の大幅改良で注目したいのは、G-トルクベクタリング・コントロールだ。この新技術は、ある意味マツダ車に限らず他メーカーを含め、多くの乗り物の常識を変える可能性をもった新技術だからだ。それには、いくつかの条件を満たす必要があるにせよ、ユーザーにとっては、新しい体験となることは間違いないのだ。

既にGVCに関しての詳細なレポートは既報だが、市販車輌に搭載された状態で、しかも市街地での試乗は初めてだ。GVCはクルマのコーナリング限界を変えるものではないので、こうした市街地での日常使いでこそ威力を発揮する。



理論としては、コーナリング時に発生する横G(重力)をコントロールするもので、これまでの常識では、ハンドルを切った瞬間からGが発生し、その方向は真横方向に発生する。コーナー頂点で最大Gを感じ、立ち上がりでGが減っていくというのがこれまでの常識だ。

GVCはハンドルを切った瞬間、真横にGが発生するのではなく、安定したコーナリングのために必要な方向にGが発生する。そのため、ドライバーは従来ほど横Gを感じることなくカーブを曲がることになる。具体的にはフロント内側のタイヤにGがかかり、次第に横方向へGが移動し、コーナー出口に向かう時にはリヤタイヤ方向へGがかかるという、GがループしているためにドライバーはGを感じにくいというものだ。

これを体感するコツは、「試乗テストだから」と意気込まず、いつも通り自分のクルマを運転しているときと同じようなリラックスした状態でハンドルを切ることだ。すると、アベレージドライバーであればカーブを見たとき「これくらいのGがかかるな」という予測があると思う。それが思ったよりGがかからないということを体験する。さらに、ロールも少ないことに気づくはずだ。これがGVCだ。



車速としては交差点を曲がるレベルでも感じられるし、首都高速などであれば如実に感じることができる。そして直進の安定性も上がっていることに気づくかもしれない。この動画はマツダが提供してくれたものだが、モデルの女性は当然、何のテストをしているのかは知らされていない。そしてモデルの首から下げたペンダントの動きに注目してもらいたい。横Gのかかり方が明確に違っていることがわかるだろう。

60km/hくらいで連続するコーナーを走ると、嘘のようにクルマは軽快に走る。ステアリングは軽く、Gも少なく、ロールも少ない。それでいて、直進状態になるとス~っとすぐに、しっかりした直進の座りが手のひらに伝わってくる。

■ベクタリング=方向付けの技術
勘違いしている記事も多く見かけるが、「スロットルを抜けば同じ効果だ」とか「トルク制御をしているだけ」というもの。確かにGVCはエンジンのトルクを断続的にダウンするが、そこがポイントではなく、トルクの方向付けをしていることがキーになる。ダウンしたトルクを曲がる前輪内側に方向づけることで、曲がりやすくなる。だからベクタリング=方向付けという技術なのだ。カーブを曲がる間中、前輪から後輪へとトルク=荷重の方向が移動している。したがってロール量も少なくてカーブが曲がれるというものだ。

従って、タイヤにかかる荷重負担は小さくなるから、タイヤはよりグリップ性能の限界まで使えるようになる。だから低摩擦の路面ではさらにGVCの効果が高いことが想像できるだろう。雪道や氷面路などでは、従来より滑り出しの限界が高くなるのだ。ただし、タイヤの性能を最大限に引き出せるという意味で、車両のコーナリング限界を高めているということではない。



■ジャークのコントロール
このGVCの考え方のベースはジャーク=加速度の変化を見ている技術ということ。例えばかつてのドッカンターボ車は2段階に加速した。この加速度の変化が大きいほど、エキサイティングかもしれないが、ナチュラルではない。これを、カーブを曲がるときの横Gに置き換え、加速度の変化を微分したものの計算式で導いている。ジャークを小さくすれば、体感的には滑らかとか、穏やかに感じるわけで、乗り物酔い防止などにもつながる。もっと飛躍すればコーナリングがゴージャスになるのだ。

この技術はすでに学会でも発表され、多くの自動車メーカーエンジンアが興味を持っているという話を聞く。さらに、グローバルなレベルでも評価が高く、世界トップレベルのドイツ・アーヘン工科大学の名誉教授も絶賛している。その理由として、多くのアベレージドライバーがこの技術の恩恵を受けることができる新技術だからだ。ぜひ、ディーラーへ足を運び体感してほしい。そしてキツネにつままれてください。

いささか、工学的知見ではない筆者の主観的な評価となるが、これを理論立てて説明する学術論文も発表されている。こうした制御を可能とした背景にはスカイアクティブGとDという高応答型エンジンがあるからで、内燃機関をアクチュエータとして使っていることにも新しい発想があるわけだ。

もっと言えば、シャシー技術の進化によって、コーナリング性能の向上が望めるが、制御技術によってもコーナリング性能の向上が望めるわけで、性能アップのために、これまではハードな部分の領域しかなかったものが、新たな手法を手に入れることができたということだ。だから、ある意味、歴史的発明なのだ。冒頭、乗り物の常識を変え、いずれ、どのクルマにも採用されていく技術になるだろうと書いた理由がそこにある。逆に言えば、シャシー技術を向上させても、この領域には到達できない別次元の性能を手に入れたというわけだ。

前述のようにコーナリングの性能限界を高めているものではないので、決して派手な技術ではない。そのため人によっては感じられないという人もいるかもしれない。ただ、新しいクルマ造りにおける基礎技術にも成り得る発明・発見であるという見方をAutoProveではしているのだ。

■2.2Lのディーゼルを改良
今回のアクセラ大幅改良では、ディーゼルエンジンの改良が含まれている。従来は2.2Lディーゼルのみの搭載ラインアップだったが、今回1.5Lのディーゼルターボもラインアップに加わった。これらのディーゼルエンジンには、ターボチャージャーが付いていて、大量のEGRを利用していることもスカイアクティブ・ディーゼルの特徴だ。

改良された部分は、このEGRを送り込むバルブの制御を変更している。よりリニアなレスポンスとするために、アクアセルの踏み方に対して気持ちよく反応するための制御とした。それは、走行中にアクセルを踏み込むとき、踏み込む速度に対してリニアに反応する。ガバッと踏み込んでいるときは、力強い加速を要求しているわけで、ゆっくり踏み込んでいるときは、ゆっくり加速させている。このときのレスポンスをタイムラグなしに、ドライバーの期待通りになるよう制御変更をしている。

通常EGRは排気タービンへ流し込まれているが、EGR量が多すぎると燃焼効率が下がり、レスポンスに影響する。そのため、アクセルの踏み込む速度が速い時には、EGRの量を減らす制御に変更。そののち、EGRを多く流入させることでレスポンスを改善しているのだ。したがって、EGRそのものの絶対量に変化はないものの、流入タイミングを変更することで気持ちよさを表現しているわけだ。この変更に伴い、燃料噴射の制御も変更されていることは言うまでもない。

ちなみに今回初搭載された1.5Lディーゼルは、デミオに搭載されているものと同様で、シングルターボではあるが、すでにこのEGRコントロールには対処している。デミオは2016年1月にこの改良を加えたエンジンで発売されており、今回アクセラに搭載した。

1.5Lと2.2Lではシングルターボとツインターボという違いがあり、このEGRバルブによる流入量&タイミングコントロールは、大小2つのタービンを持つ2.2Lのほうがよりきめ細かな制御ができるためか、実にリニアで気持ちよい反応をする。これを体感するコツはスロットル開度1/8から4/8程度をゆっくり踏み込んだ時と、スパッと速めに踏み込んだ時のレスポンスが他のクルマとどれほど違うのかを感じてほしい。応答遅れやリニア感、期待値通りの加速か?などが評価ポイントになるだろう。

■ディーゼルサウンドを打ち消すディーゼル
エンジンにはさらに、ノック音、つまり、ディーゼル特有のエンジン音を静かにする工夫が投入された。以前レポートとした「ナチュラルサウンドスムーザー」の搭載により、ある周波数帯のノック音は低減されているが、今回の変更では燃料噴射制御により燃焼をコントロールすることで、ナチュラルサウンドスムーザーでは低減できない周波数帯の音を低減している。

どういうことか、具体的にはナチュラルサウンドスムーザーは3500Hz付近のノック音を低減しているが、燃焼技術により、より低周波域の1250~2500Hz付近のノック音を低減しているのだ。この技術は「ナチュラル・サウンド周波数コントロール」と名づけ、共振技術を用いることで特定のノック音低減をしているわけだ。

この新しいサウンドスムーザーを搭載した2.2Lディーゼルの試乗では、もともと静かなディーゼルがさらに、ディーゼルの音がなくなっている。窓を閉めて走ればエンジン音は聞こえない。ドライバーはエンジンの存在をきちんと感じつつ、ゴロゴロ感やカリカリ音を聞くこともなくスムーズに走る。

余談だが、おそらくこの周波数共振技術は世界の自動車メーカーも同様に考えていることで、ジャガーのインジニウムというディーゼルエンジンはさらに、ディーゼル感のないエンジンだったことに結びついた。もはや、ディーゼルなのかガソリンなのか、助手席や後席では判別不可能の世界だ。ドライバーはトルクの出方や右足の裏で感じるエンジンフィールがあるので、判別できるかもしれないが、平均的なドライバーでは判別が難しくなっているほどだ。

ひとつ、ネガな印象として2.2Lディーゼルで40km/hとか60km/hの車速からスロットルを抜き、エンジンブレーキで減速しているときに、ある速度、ある回転域、あるギヤ段のときに大きい減速感を感じることがある。この瞬間だけナチュラルな減速ではなくなるのだ。

おそらく30km/h前後で3速、1500rpm付近での現象だと思う。これは大タービンから小タービンへの切り替えがスムーズに行われていないのかと想像する。詳細は不明なので、別な機会に取材しレポートしよう。

■プロアクティブセーフティ
マツダのスカイアクティブ導入時点で、安全に関する基礎となる考えは、ヘッドアップコックピットだ。目線を車内に落とさず常に前方視界が取れることで、安全につなげたいという思考だ。そのため、走行に必要な情報はダッシュボードの上部エリアに集中し、センタークラスターなどに視線を移動することなく、情報が分かるようにレイアウトされている。

今回のアクセラ改良では、ヘッドアップディスプレイがカラー化され視認性が向上している。また、ディスプレイの表示位置はシート位置メモリーと連動するようになっているので、いつでもアジャストされた表示になる。

従来のi-アクティブセンスでは歩行者の検知機能がなかったが、今回の改良で歩行者を認知できるようになり、また、道路の速度標識の認識も可能になった。そして、夜間の認知性アップのために、アダプティブLEDヘッドライトを装備した。市街地で歩行者認知がしやすいように、ワイド配光のロービームで、左右、とくに左側の照射範囲を広げた配光機能などを搭載した。

今回の試乗では、このプロアクティブセーフティ機能を試すことはできないが、より安全、安心なドライブには欠くことのできない機能だけに、ありがたい改良案件だ。そして、これらの新しい性能は他のマツダ車にも順次装備されていくということだ。そして前述の改良された新しいディーゼルエンジンも、GVC技術も搭載されていく。

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