ガソリンエンジンではプラグで着火しないのに燃焼する状態
エンジンから「カラカラカラ」とか、「キンキンキン」とか、あるいは「ガラガラガラ」という音が出ることがありますね。それがノッキング音というものです。
【意外と知らない】エンジンの気筒数が多いほど甲高い音がするのはなぜ?
良く耳にするのは、低回転でアクセルペダルを踏み込んだ瞬間というのが多いケースだと思いますが、高回転まで回していく時に音が出たりする場合もあります。どちらにしても異常燃焼によって発生します。
ノッキングは異常燃焼なので、音が出るだけでなく、振動も発生します。またエンジン内部が高温になってしまったり、場合によっては破損することもあります。
しかし性能や効率を考えるとノッキングが発生するギリギリ直前の状態がベストなので、一般的にはノッキングセンサーを装着し、ノッキングが発生しそうな状態、あるいはノッキングが発生したら直ちにエンジンコンピューターが補正をする、というのが常識になっています。
ガソリンエンジンではシリンダーの中の混合気(空気とガソリンが混じったもの)に、適切なタイミングで点火プラグに電気を流して燃焼させます。しかし何らかの原因で点火プラグとは無関係に燃焼してしまうことがあります。それがノッキングなんです。
ノッキングが発生するためには、まず混合気の圧力も温度も高い状態が必要です。エンジンの圧縮比が高いと当然、混合気の圧力や温度も上昇しやすくなり、結果としてノッキングが発生しやすくなります。
エンジンの圧縮比というのも、ある程度までは高いほうが効率が良くなります。マツダがスカイアクティブGで14という圧縮比を可能にしましたが、現状の技術では14前後がガソリンエンジンの上限ということのようです。つまり高い圧縮比を可能にするために、ノッキングの限界を引き上げるような設計が必要になります。直噴というシステムも、そのひとつということができます。
ディーゼルは自己着火ゆえガソリンエンジンでいえば常にノッキング状態
低回転でアクセルペダルを踏み込んだ時にノッキングが発生しやすいのは、燃焼状態が大きく変化するからです。ただでさえ低回転はエンジンにとって不安定な燃焼状態です。そこで「さあ加速しよう」ということになった瞬間に、さらに燃焼は不安定になってしまうのです。ただし低回転では燃料も少なく、エンジンを破損するようなノッキングになることはないでしょう。
それに対して高回転でのノッキングは、一気にエンジンを破損させるリスキーなものです。ただし高回転では燃焼回数も多く、燃焼自体は安定しているはずなので、ノッキングを検出して補正することは難しくありません。具体的にいえば排気バルブやそのバルブシートが高温になるので、そのあたりの冷却をしっかり設計することが求められます。
ディーゼルエンジンは「ガラガラガラ」というノッキング音を出しますね。そもそもディーゼルは点火プラグを持たず、燃焼室内の温度と圧力によって燃焼を始める、自己着火という燃焼方式です。つまりガソリンエンジンの視点でいえば、常にノッキングしているようなものです。
現代のディーゼルでは高圧の直噴システムが常識的になっています。コモンレール式というのがほとんどですが、なかにはユニットインジェクター式もあります。自己着火という、いわば成り行きの燃焼を上手くコントロールするためには、短い時間で噴射でき、また低回転では細かく何度も噴射できる高圧の直噴システムがピッタリなんです。
そのディーゼルの「ガラガラガラ」という音も、やはり低回転でアクセルペダルを踏み込んだ瞬間に出ます。ガソリンよりも音が大きいのは、ディーゼルのほうが圧縮比が高いためで、振動も大きく出てしまいます。最新のディーゼルは圧縮比が低くなっていますが、それでもガソリンと比較にならないほどの音が出ます。それに耐えるため、ディーゼルエンジンには設計面から強い構造が求められます。
(文:岡村神弥)
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