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【70年代のF1マシン】ワールドチャンピオン自らの名を冠したマシンたち

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【70年代のF1マシン】ワールドチャンピオン自らの名を冠したマシンたち

サーティース・ヒル・フィッティパルディなど伝説の王者の名が入る

マクラーレンやブラバムは、ドライバーが自らの名を冠したオリジナルマシンを製作し、コンストラクター/チームとしての地位を築いたのは以前に紹介したとおり。とくにブラバムは、オーナーのジャック・ブラバムが駆り1966年にワールドチャンピオンに輝いているが、これは自らの名を冠したマシンで王座に就いた唯一のケース。

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その一方でジョン・サーティースやグラハム・ヒルも自らの名を冠したマシンを製作、ドライブしてF1GPを戦っているが、これはワールドチャンピオンに輝いて以降の話。

マシンのポテンシャルやチーム体制、つまりは充分な資金力やマシン開発体制が整ってなかったこともあり、残念ながらサーティースやヒルの、彼らが本来持っていたであろうパフォーマンスを再現することはかなわなかったが、彼らとその愛機は、最後まで戦い抜いたのも事実。

一方、1972年に最年少記録を塗り替えてワールドチャンピオンに輝いたエマーソン・フィティパルディも、74年に2度目のワールドタイトルを得たのち、76年からは自らの名を冠したマシンで参戦している。ただしチームを立ち上げたのは、実兄であり元F1ドライバーでもあったウイルソン・フィッティパルディだった。

スポーツカーノーズにサイドマウントのラジエターをトレードマークに

1973 Surtees TS9B・Ford Cosworth DFV 1974 Surtees TS16・Ford-Cosworth DFV 1975 Surtees TS16・Ford-Cosworth DFV 1976 Surtees TS19・Ford Cosworth DFV 1977 Surtees TS19・Ford Cosworth DFV

2輪ロードレースの最高峰である世界GPの500ccクラスで、4度のワールドチャンピオンに輝いたのちに4輪に転向。やはり最高カテゴリーであるF1GPでも1964年にフェラーリでワールドチャンピオンに輝いた“ビッグ・ジョン”ことジョン・サーティースは70年に自らチームを設立、オーナー兼ドライバーとしてF1GP参戦を続けることになった。

当初はマクラーレンを使用していたが、シーズン中盤、70年のイギリスGPで、自らの名を冠したオリジナルマシン、サーティースTS7をデビューさせている。

直線的なラインで構成されたボディとウイングノーズをもった、当時としては比較的コンサバなデザインだったが、やがてトレンドに則ってスポーツカーノーズにコンバート。ラジエターもモノコック後部の両サイドにマウントしたTS9Bを72年に投入した。

以後は、このパッケージがサーティースのトレードマークとなっていった。74年に登場したTS16は、発表当初はフロントラジエターだったが、実戦デビューに際しては、それまでのモデルと同様、ヒップマウントに戻されていた。

76年にデビューしたTS19は、アルミ製のツインチューブモノコックが、ブラバムが先鞭をつけたトライアンギュラー・タイプ、つまり三角断面のものとなり、シャーシ剛性が引き上げられている。78年にはテスト的に、ウイングノーズにコンバートしたTS20も登場したが、そのシーズンを限りにF1GPから撤退することになった。

スポーツカーノーズの前面両サイドにある大きな通風孔が印象的な#72号車は、73年仕様のTS9Bで、2016年のフェスティバルofスピードで撮影。

FINAのロゴが映える#44号車は、74年仕様のTS16で、15年にスパ-フランコルシャンのサーキット博物館で撮影。モノクロ写真で分かり難いが、黄色とブルーのツートンラーにノーズに矢印の入った、ワークスカラーの#18号車は、75年のオーストリアGPでジョン・ワトソンがドライブしたTS16。そして伊太利屋カラーの#18号車は76年の富士で高原敬武がドライブしたTS19。同じく、durexカラーの#18号車は77年の富士でハンス・ビンダーが走らせたTS19(ともに富士スピードウェイ・広報部提供)。

苦戦の末に悲劇の終末を迎えた悲運のマシン

1975 Hill GH1・Ford-Cosworth DFV

1962年と68年、それぞれBRMとロータスを駆って2度のワールドチャンピオンに輝いたグラハム・ヒルが、エンバシー煙草のスポンサードを受けて自らのチームを立ち上げたのは1973年のことだった。活動初年度はシャドウからDN1の供給を受け、翌74年からはローラに専用マシンとしてオーダーしたT370で戦っている。

そして75年シーズンには自らの名を冠したヒルGH1を登場させている。ただしGH1はT370と同様にアンディ・スモールマンが設計しローラで製作されていたから(ローラ内での呼称はT371だった)コンストラクターとしてヒル(チーム名はエンバシー・ヒル)を名乗っているもののローラ/ヒルと表記されることも少なくなかった。

いずれにしてもGH1/T371は、ヒルの期待ほどに速くはならず、得意としていたモナコGPでもDNQに終わり、ヒルは失意のうちに引退し、オーナー監督に専念することになった。

とは言うものの前年のT370は1度きりの6位入賞がシーズンを通じてのベストリザルトだったが、GH1/T371ではアラン・ジョーンズがドイツで5位入賞を果たしてT370を上まわり、何よりもヒルの後釜としてエースに抜擢したトニー・ブライズが参戦2戦目のスウェーデンで6位入賞を果たしており、前途洋洋たるものが、少なくともヒルら関係者の胸の内にはあったはずだ。

ところがシーズン終了後、翌76年用に製作したニューマシン、GH2のテストにフランスまで足を伸ばしたが、その帰路、ヒル自身が操縦し、チームの主要メンバーが乗り込んだ軽飛行機が濃霧のなかで墜落するアクシデントが発生。オーナー監督のヒルと新エースのブライズが命を落とす結果となり、チーム活動もそのまま終焉を迎えることになった。まさに苦労の末に悲劇の終末を迎えた格好だった。

写真は75年のオーストリアGP。渾身のドライビングを見せたトニー・ブライズの雨中の走り。なお、英国のサマセット(ヒースロー空港から西約80マイル)にあるハインズ国際自動車博物館には、赤いストライプが映えるエンバシー・カラーのT370が収蔵展示されている。撮影はしたものの掲載はご法度とのことで、興味ある読者は、ぜひ現地でご覧頂きたい。

ピケやセナが憧れたブラジルのヒーローの名を冠したマシン

1975 Copersucar-Fittipaldi FD03・Ford-Cosworth DFV 1976 Fittipaldi FD04・Ford Cosworth DFV

日本人ドライバーとして初めてF1GPにレギュラー参戦した中嶋悟・現NAKAJIMA RACING総監督が後進に道を開き、続いて鈴木亜久里・現ARTAプロデューサーや片山右京・現チームUKYO代表が後に続いたように、ブラジルでも先駆者が登場し、後を追うように若きヒーローが続出した。

若きヒーローはネルソン・ピケでありアイルトン・セナだが、先駆者とは72年に最年少記録を塗り替えてワールドチャンピオンに輝いたエマーソン・フィッティパルディだ。

エマーソンには3歳年上の実兄、ウイルソンがいて、彼もまたF1GPに参戦していたが、弟ほど輝かしい記録を残す前に現役を引退、74年にはブラジル初のF1チーム、コパスカー・フィッティパルディを誕生させている。ちなみに、コパスカーとは砂糖やアルコール(エタノール)を製造するブラジルの企業体でチームのタイトルスポンサーでもあった。

それはともかく、コパスカー・フィッティパルディのデビューシーズンは苦悩の連続となった。ウイルソンのシングルカー・エントリー(イタリアGPではウィルソンの代役としてアルトゥーロ・メルツァリオがドライブ)だったが、デビューレースとなったアルゼンチンGPでは決勝中に大クラッシュを演じてFD01の1号機が全損。

ホームGPとなる第2戦のブラジルを前にFD02と命名した2号機を製作する羽目になり、結局このシーズンは、最終戦のアメリカGPでの10位がベストリザルトという有様だった。

翌76年にはウイルソンが引退してオーナー監督に専念し、代わりに弟のエマーソンがマクラーレンから移籍してエースに迎えられ、さらにブラジル人で若手ドライバーのインゴ・ホフマンをナンバー2に据えるなど体制を充実。エマーソンが数回の入賞を重ねるなど調子も上向きとなっていった。

パドック内に停めたトランポ脇のテント下で整備中の2台のFD03と(ともに#30番をつけていて、いずれか一方が本番車でもう一方がスペアカーと思われるが詳細は不明)、ウイルソンのドライブでコーナーを行く#30のFD03は75年、ニュルブルクリンクで行われたドイツGPで撮影。

サーティースとヒル、そしてフィッティパルディの3台は、名ドライバーが必ずしも名監督とならない好例だが、奇しくも3台が唯一競演した75年に本場でF1GPを取材(観戦)できたのは貴重な経験だ。

一方、真正面(富士スピードウェイ・広報部提供)とサイドビュー、2枚のカットはエマーソンがドライブする#30のFD04で、76年に富士で行われたF1世界選手権inジャパンでのひとコマ。

(文・写真:原田 了)

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