元ディーラーマンが経験したお客のヒドすぎるマナー
日本では、一般的に新車ディーラーは足を運びにくい場所だと思われがちである。販売する商品の単価が高いせいか、購入や点検などの要件がない限り、気軽には入りづらいと感じている人がいまだに多い。
【逆効果になることも】新車ディーラーでのNGな値引き交渉5選!
しかしその一方で、「クルマが大好き」か「値引き交渉に執念を燃やす」の2種類の人は、何の躊躇もなくガンガン足を運ぶ。それは良いのだが、なかにはベテランセールスマンも仰天のビックリマナーで現場をかき回す人が現われるのは困ったものだ。
新車の販売現場の平和を守るためにも、できればそういう客は減って欲しいので、そんな願いを込めつつ、ここでは新車セールスの現場で遭遇したビックリマナー客の仰天5選を紹介したい。
ビックリマナー客その1: 「来店するなり、いきなり『ここはナンボ引きじゃあぁぁぁ~!!!』と叫ぶ」
新車の商談に値引き交渉はつきもの。特に関西エリアでは客から熾烈な値引きを要求されるのが当たり前だが、開口一番「お前はナンボ引いてくれんねん!!!」などと大声で叫ばれても返す言葉がない。
せめて希望の車種ぐらいは言ってくれないと、いったい何を買いに来たのかもわからない。現代の日本にも、ここまで常識の欠落した大人がいるのだ。値引きへの執念が人を狂わせるのだろうか。
この手の客はホット度が高い(買う気がある)場合が多いのでわかりやすいという意味では助かる面もある。しかし、こういうタイプは得てして新車を納めてからも追加の用品や点検など、ことあるごとに無謀な値引きを要求してくる厄介極まりない客となるので、よほど受注台数に困っていない限り付き合いたくないものだ。
ビックリマナー客その2 「試乗中に限界インプレッション」
普通の神経を持った人は、ディーラーでの試乗時は極めて慎重に運転する。慣れてないクルマを運転するのは不安だし、万が一にも事故があってはならないとの意識が働くからだが、なかには何の遠慮もなく情け容赦なくエンジンをブチ回したり、強引にコーナーを攻めたり超急ブレーキをかけたりして、同乗するセールスマンを臨死体験に誘う人がいる。
スポーツカーの場合など、ある程度はスポーティな走りの質を確かめたい気持ちはわかるが、せめて最低限「ちょっとアクセルを踏み込んでもいい?」ぐらいのひと声をかける配慮は欲しい。
話題性の高いスポーツモデルが出たときなど、購入する意思はゼロなのに試乗だけはしまくるマニアも少なくないが、基本的にディーラーの試乗は「ちょっと雰囲気を確かめる程度のもの」なので、限界領域の挙動を探るような運転はどうか控えていただきたい。
最近だと、 SNS投稿用の写真や動画を撮るためだけに試乗する人も少なくなく、悩みのタネのひとつになっている。
なんと子供を預けてパチンコ屋に行く親も!
ビックリマナー客その3: 「ノベルティーグッズを大収集」
週末の拡販キャンペーンや展示会などでは、商談や試乗をした来場客向けのノベルティグッズが店頭に置かれる。
なかには、すべての来場者に配られる粗品もあり、一応そのディーラーで販売するブランドのロゴなどが入った非売品であったり、またはラーメンやティッシュボックスなどの実用品だったりして、各社とも、最近ではその内容はかなり豪華で充実したものになっているのだが、ここぞとばかりに一家総出で近隣の系列店舗のすべてを回り、ノベルティグッズの収集への執念を燃やす家族が現われる。
そもそも客引きのためのものとはいえ、あからさまにノベルティグッズ狙いでクルマそのものへの関心はゼロです、という態度で来場するのはやめてほしいものだ。
ビックリマナー客その4 クルマが汚れるたびにクレームをつける
国産車ディーラーでは車検などの大掛かりな点検・整備の時ぐらいしか洗車しない場合が多いが、高級輸入車のディーラーでは、基本的に入庫する既納客のクルマはすべて洗車する姿勢のディーラーが少なくない。
とくに、異音や電気系の不具合などのクレームで入庫した場合は可能な限り洗車(しかも手洗い/室内の掃除機がけも実施)するので、セールスマンだけでは手が回らず、洗車・引き取り/納車要員のバイトが数名居たりするほどだ。それを利用して、雨上がりなど、ちょうどクルマが汚れた頃を見計らってクレームをつけてディーラーにクルマを引き取らせる人が居る。
異音や違和感系のトラブルは、ディーラーに入庫したりセールスマンが乗る時に限って症状が出ないということがよくあるため、それを逆手にとっての策略だ。毎回、クルマを引き取って点検しても「今回は異常が見られなかったので、しばらく様子をみてください」という結果で納車するのだが、洗車させることが目的の小さなクレームの連発は本当に迷惑なのでどうかやめてほしい。
ビックリマナー客その5: ファミレスのドリンクバー感覚で長時間居座る
最近のディーラーは来場者向けのドリンク類の充実が著しい。昔は自動的にホットコーヒーが出る程度だったが、最近は店内に入るや否や、女性スタッフがドリンクのメニューを片手にオーダーを聞きに来るのが当たり前となった。
レクサス店のコーヒーの美味さは一部で話題となったが、普通の国産ディーラーでもドリンク類のラインアップと待ち合い室の環境の充実ぶりは目をみはるものがある。しかし、それと比例して点検や商談もせずに延々と居座る人が増えてきた。
平日の昼間などは店内で目立つためかあまり発生しないが、セールスもサービスもバタバタしがちな土日は本当の客に紛れて、ただ寛いでいるだけの人が居るのだ。ひどい場合はキッズスペースを託児所代わりに子供を置き去りにして近くのパチンコ屋へ、という信じがたい人も。
最近の自動車ディーラーは、多くの人にとって居心地が良い場所になっていることが裏目にでるという、なんとも悲しい現実である。
(文:マリオ高野)
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