オーテックとザガートのタッグで作り上げた至高の1台
1989年、トヨタの最高級車であるセンチュリーの、もっとも高いモデルが758万円だった時代になんと1780万円の280馬力の国産スペシャリティカーが発表された。
オーテック・ザガート・ステルビオは日産自動車の子会社であるオーテック・ジャパンとイタリアのカロッツエリア・ザガート(現SZデザイン)がタッグを組み、車体を日本で作り、ボディと内装をイタリアで仕上げるという複雑な工程を経て日本に輸入された、バブル期だからこそ成立したモデルだ。
ちなみに当時のメルセデスベンツの最高峰といえる560SECが1465万円。真のプレステージカーであったことは間違いない。車両は2代目のレパードをベースに、アルミ製ボディとカーボンボンネットをドッキングし、内装は総革張りという豪華な作りだ。内装はレパードの面影を感じられるが、ボディはザガートの職人によるたたき出しで、独創的なボディ一体型のサイドミラーなど金型プレスでは再現できない滑らかなシルエットは日本車にはないセンスに満ちあふれていた。
惜しむらくはベースが5ナンバーサイズであったこと、現在のように3ナンバーボディがベースなら、さらに優美なボディが描けたに違いない。エンジンはVG30DET型をオーテック・ジャパンでチューニングが施され、ノーマルの255馬力/35.0kg-mから280馬力/41.0kg-mにパワーアップし、当時の自主規制値に到達。
4速ATとの組み合わせは、スタイリングに負けない優雅な走りを実現していた。生産は全世界で200台を予定していたが、実際は100台程度で終了。この失敗によりオーテック・ジャパンの経営を圧迫し、最終的にはカロッツエリア部門から撤退を余儀なくされたが、ステルビオのDNAはオーテック・ジャパンに確実に受け継がれている。
(文:GT-R magazine編集部 山崎真一)
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