部品点数が少なく荷室や室内の自由度が高い
今、街で見かける乗用車の大半はFFレイアウトで、その他の駆動方式はかなり少数派。FFがあまりにも多いので、そのほかのクルマは、わざわざFR、MR、RRとその特徴を強調するほど。もうひとつ、4WDもあるが、4WDもFFベースがほとんどで、駆動方式に関してはFF抜きには考えられないほど席巻している。
なぜ、ここまでFFだらけになったのか? FFの利点は、室内スペースが大きくとれて、トランクスペースも広くできること。そしてプロペラシャフトなどがいらない分、部品点数が少なくて済み、車体を軽くすることができる。
同じような利点が、RRにも当てはまりそうだが、RRではデザイン的にも機能的にもトランクスペースが広く取れず、冷却面にも難があり、直進安定性も得意ではない。乗用車にとって直進安定性は非常に重要な性能で、これもFFが主流になった大きな理由のひとつといえる。
FFが台頭してきたのは、なんといっても、1959年にミニが登場したのがきっかけ。ミニの設計者、アレック・イシゴニスは、エンジン横置きのFFレイアウトで、小さなボデイに大人が4人も乗れるスペースを作り出して、自動車史を変えた。
その後、フィアット128が横置きエンジン・横置きミッションを実用化し、現在のFFレイアウトのベースが完成。さらに傑作車、VWゴルフのヒットで、本格的なFF時代が到来する。
日本ではMM思想を掲げたホンダがN360からFF中心に
日本では、合理的精神を重んじた本田宗一郎のFF好きが有名。彼はMM思想(マンマキシムメカミニマム =人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)を掲げ、ホンダのクルマづくりの基本コンセプトに据えたので、ホンダ車は1967年登場のN360からFFが中心になった。
あまりに合理的過ぎて、「水冷エンジンも最後は空気で(ラジエターを)冷やすんだ」と、ホンダ初の小型乗用車=ホンダ1300にオールアルミの空冷エンジン(しかもドライサンプ)を搭載するが、F1でも空冷は不発で、本田宗一郎が第一線から退くきっかけにもなった……。
そのホンダには、かつてエンジン縦置きのFFで、FFミッドシップ・レイアウトと称した初代インスパイア(3代目ビガー)もあったが、レイアウトに無理があり、室内が狭く、不人気車となった。
またエンジン縦置きのFFといえばアウディも。アウディは、クルマは加速時にリヤに荷重がかかるので、FFにハイパワーエンジンを載せても、トラクションが掛けづらいという短所を補うために、縦置きでフロント荷重が抜けづらくなるように設計。また4WD化にも適しており、「クアトロ」シリーズにもつながっている。
レーシングカーでは、1925年のインディ500で2位なった“ミラー”というFFのマシンがあったが、これもFFが直進性が優れているというハンドリング面の利点から登場したクルマだった。
近年では、去年、日産がFFレイアウトの「GT-R LMニスモ」でルマンに参戦し、惨敗したのが記憶に新しいところ。空力優先のチャレンジだったが、850馬力のFFレーシングカーなんて……。
(文:藤田竜太)
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