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【元祖ぶつからないクルマ】スバル・アイサイトの進化を追う

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【元祖ぶつからないクルマ】スバル・アイサイトの進化を追う

開発はじつに1980年代から行われていた

「ぶつからないクルマ」として一世を風靡し、プリクラッシュブレーキをはじめとする運転支援システムの普及を一気に進めたスバルの「EyeSight(アイサイト)」。

【注意】自動ブレーキはシステムにより効果に大きな差がある!

同様の機能を備えるシステムが乱立状態にある今もなお、玄人筋からの評価が高い理由は、他のシステムよりもずば抜けて長い開発期間を費やして完成したというアドバンテージにある。

まず、「EyeSight(アイサイト)」の最大の特徴は、ステレオ画像認識を用いた運転支援システムであるということ。

その歴史は古く、1989年には前身技術の「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」の開発が始まり、1999年5月にはランカスターの最上級グレード「ランカスターADA」として、世界で初めての商品化に成功した。

前身システムのADAは、現在のアイサイトと同じくフロントウインドウ内側に設置された2基のCCDカメラから得られた立体画像情報を解析するステレオ画像認識装置により、車両の前方状況を認識。 「EyeSight(アイサイト)」は前身システムのADAの初期段階から「人間の目と同じ機能で前を見る」ことを重視して開発されてきた。

初期世代のADAの機能は、以下の4つの警告・制御を実現。

●車線逸脱警報 ●車間距離警報 ●車間距離制御クルーズコントロール ●カーブ警報/シフトダウン制御

1999年当時としては画期的なシステムだったが、装着車両は価格が約50万円も高くなり、運転支援システムの認知度の低さも災いし、販売台数は低迷。

それでもADAは地道に進化し続け、2003年に発売された4代目レガシィの「ツーリングワゴン 3.0R」に搭載された第3世代のシステムでは、従来のステレオカメラに加えてミリ波レーダーも採用。

最大の難点であった天候による悪影響を低減し、より広範囲に周囲の環境を認識できるようになった。

機能面ではブレーキ制御も行えるようになったが、価格はプラス70万円と従来よりも大幅に高くなり、普及はさらに遠のいてしまうことに。

重要な先行開発技術とはいえ、当時の開発担当者は社内で肩身の狭い思いをしていたという。 その後もADA装着車の台数は伸び悩み、一時はカタログ落ちすることもあったが、それでもスバルは諦めなかった。

ADAの技術は鉄道の踏切障害物検知装置にも採用

2006年には、ADAとは別の「運転負担軽減機能」を備えたシステムとして「SIレーダークルーズコントロール」をレガシィの特別仕様車に設定。全車速追従(0~100km/h)や車間距離警報を行えるようになっている。

ミリ波レーダーよりも低コストのレーザーレーダーをフロントグリル内に設けたことで、価格のプラス分は23万円程度に抑えられた。

2006年5月から採用が始まったエンジンの出力特性を制御する「SI-DRIVE」と組み合わせることにより、システム使用下での高速巡航で実用燃費が劇的に向上するなど、スバルの運転支援システムは「SI-DRIVE」と合わせて徐々に注目度が高まるようになり、開発陣は自信を深めていく。

ちなみに、ADAのステレオ画像認識システムは鉄道の踏切障害物検知装置に用いられた実績をもつ。 JR東日本との共同開発で、ADAの技術を踏切の障害物検知装置に応用。踏切の遮断中における侵入物を検知することを目的としたが、クルマや二輪車、歩行者を正確に検知し、良好な検知機能を持つことが確認された。

1年以上にわたるフィールド試験でも高い耐久性を発揮することも確認されている。アイサイトの基礎となる技術は、意外な場所で磨かれたのだ。

ついにアイサイトが4代目レガシィの最終型に採用

そして、2008年5月発売の4代目レガシィの最終型(アプライドF型)に次世代ADAとして「EyeSight(アイサイト)」を設定した。新型ステレオカメラと新開発3D画像処理エンジンにより、歩行者や自転車をも認識可能としたプリクラッシュセーフティシステムを実現。

ADAの機能に加え、プリクラッシュブレーキや世界初のAT誤発信抑制制御、全車速追従機能付き(0~100km/h)クルーズコントロールを備えている。レーダー類を廃し、ステレオカメラ2基による比較的シンプルなシステムに戻したこともあり、価格のプラス分は約20万円にまで圧縮できた。

しかし、「EyeSight(アイサイト)」は極めて入念に実施する実走試験などで開発に膨大な時間がかかるため、この翌年にフルモデルチェンジした5代目レガシィでは、初期のA型の時点では検証開発が間に合わず「EyeSight(アイサイト)」の設定が見送られている。

「EyeSight(アイサイト)」がブレイクするのは、2010年5月発売の5代目レガシィのアプライドB型より満を持して搭載された「EyeSight(アイサイト)Ver.2」から。

Ver.2は、プリクラッシュブレーキアシストに加え、全車速度追従クルーズコントロールに停止保持機能を追加。

前方の認識能力やアクセル&ブレーキ制御も高精度化している。価格のプラス分は実質10万円と圧倒的な低価格を実現したことで装着率は激増。「ぶつからない」のキャッチコピーも奏功して、EyeSight(アイサイト)は瞬く間に世間に浸透した。

5代目レガシィのC型以降はさらなる改良が加えられ、認識能力や制御がさらに高精度化しているが、名称はVer.2のままとなっている。一部のマニアはVer.2.5と呼んで区別することも。

レーンキープアシストも加わったアイサイトVer.3

そして、スバル入魂のブランニューモデルとして誕生したレヴォーグからはVer.3をに進化。

ステレオカメラの視野角と視野距離を40%も向上させ、カラー認識化により赤信号や先行車のブレーキランプの認識も可能に。カメラの画素数はモノクロ30万画素からカラー120万画素となり、装着位置もより前へと移動している。

レーンキープアシストには車線中央維持のステアリングの自動アシスト機能が加えられ、さらにAT誤発進抑制には後退時も対応できるようになった。

プリクラッシュブレーキの対象物との速度差は、Ver.2の30km/hから50km/hとなり、他のシステムの性能を引き離した。逆光や悪天候などの外乱要因にも強くなっている。

さらに、先行車との車間距離や信号待ちなどの際に前車が発進したことを知らせる「前車発進モニター」など、モニター類の充実も著しく、ドライバーへ伝えられる情報もよりわかりやすくなった。

現在では同等の性能を備えるシステムが増えたが、価格の安さや制御の精度の高さなど、総合力ではまだアドバンテージがある。

2015年4月からは「アドバンスドセイフティパッケージ」が設定され、EyeSight(アイサイト)ではカバーしきれない後方や側方などの死角に迫る車両の認識が可能な仕様も選べるようになった。

(文:マリオ高野)

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